半神英雄マウイ③|太陽を捕らえた縄 ― ハレアカラでの約束☀️

マウイは私たちのために何をしてくれたのか?

かつて、ハワイの太陽「ラ」は、今よりもずっと気まぐれで、空を駆け抜けるスピードは恐ろしいほどに速いものでした。人々が朝起きて畑に出ても、作業を始める頃にはもう日が沈み、夕闇が訪れます。特にマウイの母ヒナは、毎日途方に暮れていました。彼女が心を込めて作るハワイの伝統的な樹皮布「タパ」は、生活を支える大切な宝物ですが、あまりに日が短いために、布が乾く前に夜の湿気にさらされて台無しになってしまうのです。沈みゆく太陽を見送りながら、力なく溜息をつく母の横顔を見て、マウイの胸には「母さんを助けたい」という、英雄として、そして一人の息子としての熱い想いが込み上げてきました。

マウイは母の涙を止めるため、人知を超えた壮大な計画を立てます。彼は、妹や母ヒナから授かった、不思議な霊力が宿る魔法の繊維(一説には、より強い結びつきを象徴するヒナの髪)を使い、決して切れることのない16本の強靭な縄を編み上げました。準備を整えたマウイは、マウイ島で最も天に近い場所、ハレアカラ(太陽の家)の山頂へと向かいます。極寒の頂で、彼は息を潜めて太陽が昇るその瞬間を待ち続けました。岩陰に身を隠し、吹き付ける冷たい風に耐えながら、彼はただ一つのチャンス、太陽の「足」である最初の光線を捕らえるタイミングだけをじっと見定めていたのです。

夜明けと共に、巨大な太陽の「足」が火山の火口から一本、また一本と眩しく伸びてきました。その瞬間、マウイは電光石火の速さで16本の縄を次々と投げかけました。燃え盛る光の足を岩に縛り付けられ、不意を突かれた太陽は驚き、激しくもがき苦しみました。空全体が燃え上がるような激しい抵抗に、マウイは一歩も退かず、手にした棍棒を振りかざして毅然と交渉を始めます。「お前の気まぐれのせいで人々は飢え、母のタパも乾かない。これからは夏の間、ゆっくりと空を歩くと約束しろ。さもなくば、お前の命はここで終わりだ」。太陽はその凄まじい気迫と、自分を捕らえたマウイの知恵に圧倒され、ついにその要求を飲むことを誓いました。

この日から、ハワイには穏やかで豊かな昼の時間がもたらされました。太陽はマウイとの約束を守り、1年の半分は空をゆっくりと歩むようになったのです。母ヒナのタパは見事に乾き、人々は明るい陽光の下で笑い合い、豊かな収穫を祝うことができるようになりました。私たちが今、美しい夕焼けをゆったりと眺め、長い一日の終わりに安らぎを感じられるのは、マウイが愛する母のためにハレアカラの頂上で繰り広げた、あの命がけの「約束」があったからこそなのです。

【次回予告】次はマウイがどうやって、鳥が独り占めしていた「火」の秘密を暴いたのか?
太陽を手なずけたマウイでしたが、次に必要だったのは暗い夜を照らす「火」でした。不思議な鳥アライ・ウラとの、手に汗握る知恵比べ。なぜその鳥の額が今も「赤い」のか……その理由が、マウイの冒険の中に隠されています。

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