マウイは私たちのために何をしてくれたのか?
かつて、この世界には「火」というものが存在しませんでした。日が沈めば大地は深い闇に包まれ、人々は冷たい風に震えながら、生の食べ物を口にするしかありませんでした。しかし、好奇心旺盛なマウイは、ある不思議な光景を目にします。森に住む小さな鳥、アライ(アライ・ウラ/バン)たちが、人間が近づかない奥地で、こっそりと温かい食事を楽しんでいることに気づいたのです。マウイは確信しました。あの鳥たちは、暗闇を照らし、食べ物を美味しく変える「火の秘密」を独り占めしているに違いない、と。
知恵者であるマウイは、すぐに鳥たちを捕まえようとしましたが、用心深いアライたちはマウイの気配を察すると、瞬時に火を消して飛び去ってしまいます。そこでマウイは、ある「いたずら」を仕掛けました。カヌーの上に自分そっくりの人形を乗せ、あたかも自分が海へ漁に出かけたように見せかけたのです。案の定、マウイが遠ざかったと思い込んだ鳥たちは、岸辺で火を起こし始めました。草むらに息を潜めていたマウイは、一気に飛び出すと、逃げ遅れた一羽の鳥の首根っこを掴み上げました。
「さあ、火の出し方を教えろ。さもなければ、お前たちの秘密を二度と使えないようにしてやる!」とマウイは迫ります。捕まったアライは、最初はマウイを騙そうとして、水を含んだ木の枝やタロイモの茎をこすり合わせるように教えました。しかし、何度やっても火は出ません。マウイがさらに厳しく問い詰めると、ついに鳥は観念し、乾いた「ハウの木」と「ウルーの木」をこすり合わせるという真実の儀式を白状しました。マウイがその通りにすると、小さな火種が生まれ、やがてそれは暗闇を払う力強い炎となりました。
マウイは手に入れた火を大切に抱え、村の人々へと持ち帰りました。これが、人類が手にした「はじまりの火」です。別れ際、マウイは真実を話した証として、あるいは最初に嘘をついた罰として、火のついた棒でアライの額をそっとなでました。今でもハワイに住むアライ・ウラの額が、まるで火が移ったかのように鮮やかな赤色をしているのは、マウイが人類に文明の光をもたらしたあの日の物語を物語っているのです。
【次回予告】マウイの冒険の終着点、そして彼が夜空に刻んだ「最後の遺産」とは?
全ての冒険を終えたマウイは、最後に「人間に永遠の命を授ける」という究極の挑戦に挑みます。その結末と、今も夜空に輝く「マウイの釣り針」の正体とは。感動のフィナーレをぜひご覧ください。
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